C-516 ナラ材で作る蟻組み接ぎ（ありくみつぎ）の厨子

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鹿児島県のKさんからの御依頼でナラ材の厨子をお作りしました。「厨子」と称してはおりますが、実はこの家具「神棚を納めるための家具」です。

仏壇の注文をお請けするようになって気づいたことのひとつが、仏壇と神棚の両方を引き継いでおられるご家庭が意外と多いこと。「父方は仏教で母方が神道なので」という場合もあれば、「うちは代々仏教でしたが私の代で神道に改宗しまして」というような場合もあり、その理由は様々のようです。Kさんもまたご自宅で「仏さま」と「神さま」の両方を祀っておられる方のおひとり。この家具をご注文くださる前に実は仏壇もお納めしているのですが、その仏壇をとても気に入ってくださったKさんから、今度は「神さま」のための家具をオーダー頂いたというのが注文の経緯です。

こちらがKさんのためにお作りした家具の図面です。普段お作りしている厨子との大きな違いはその奥行き。多くの事例が25cmから30cm程度なので、45cmというのは異例の深さです。

これは完成した「厨子」の正面の様子です。扉の材料には「柾目（まさめ）」に近い、おとなしめの木目を選びました。

内部の様子です。こうして正面から見る限りは通常の厨子を何ら変わりありません。

しかし少し角度を変えて眺めてみると奥行きがずいぶん深いことがわかります。Kさんは、奥の段に神棚を据え、その手前に「神鏡」や「榊」を並べてお使いになるそうです。

スライド式の棚板もあります。こちらには「三宝」の代わりとして使用され、上には「酒」や「米」などが並びます。

これは天板と側板（がわいた）との接合部をアップで見た様子ですが、このような接合方法を「蟻組み接ぎ」と言い、Kさんはこの「蟻組み接ぎ+ナラ材」の組み合わせがとても気に入っておられ、御依頼に際しての必須条件として、この2点を真っ先に挙げていらっしゃいました。

先述のとおりこの家具は「神棚を納めるための家具」なのですが、撮影に際し、通常の厨子（小型仏壇）のように上段にご本尊を置いてみたところ、奥まった所に佇立する立像が、普段よりも清高なものに感じられるという新しい発見がありました。設置場所の条件が許すならば、あえて奥行きの深い小型仏壇を選ぶのも良いかもしれません。

Kさんはメールをしない方なので、打ち合わせは電話とお手紙。作品を受け取られた際も、直後に必ずお電話をくださいます。今回もとても喜ばれたご様子の電話をいただきました。Kさん、いつもありがとうございます。