C-543　　仏壇としてのキャビネット

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私達のような家具工房に仏壇の製作依頼をしてくださる方たちは、「仏壇らしくない仏壇」　「仏壇に見えない仏壇」　「家具のような仏壇」などを求めてお声がけくださっている場合が殆どかと思うのですが、このキャビネットは、そういう観点からするとある意味”究極”で、あえて申せば「もはや仏壇ですらない仏壇」ということになりましょうか。つまり仏壇ではないものを仏壇としてお使いになる、という稀有な実例です。

このキャビネットをご依頼くださった東京都のSさんは、たぶん建築関係のお仕事をしておられる方でしょう、たいへん手慣れた感じの寸法入りスケッチをメールに添付して送って下さいました。これがとてもよく考えられたスケッチで、ほんの一部に手を加えただけで、図面化することができました。

Sさんのスケッチを元に、一部に修正を加えてできあがった図面がこちらです。

そしてこちらが完成したキャビネットです。過去の製作事例C-379とC-507の下置き台を折衷したようなデザインになりました。使用している木材はブラックチェリーです。

ツマミもハンドルも無い、スッキリとした前面です。

天板も縦框（垂直の柱材のこと）も、その面取りはごくシンプルで控えめなものに留められています。そのためでしょうか、どこか禁欲的な雰囲気が漂うキャビネットになりました。

このような無垢の板を扉として用いる場合は、その裏面に丈夫な反り止めを取り付けています。

スライドレールが取り付けられた桐の引き出しです。

立ち入ったことをお聞きするのもためらわれたので、あまり詳しいことまでは承知していないのですが、天板の上には遺影や位牌などが並べられるようでした。そして扉の中や引き出しの中には恐らく遺品などが納められるのでしょう。

仏壇ではないものを仏壇として用いる。これからはこのような例が増えていくかもしれないなと感じました。Sさん、ありがとうございました。