C-544 　キャビネットのような祖霊舎

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【はじめに】　文中にある「着座拝」は造語です。仏壇をお参りする時の姿勢を表す言葉としては「座拝」と「立拝」の２つが広く知られており、前者は正座をして拝むことを、後者は立って拝むことを意味します。しかし椅子に腰掛けてお参りすることを示す言葉が見当たりません。そこで、家具工房クラポでは便宜的にこれを「着座拝」とすることにいたしました。

茨城県のOさんから「必要に迫られて祖霊舎を探していてどれもこれも欲しくないなぁ…と思っていたところ、やっと御社のホームページにたどり着きました」というメールが届きました。

「神式の場合、お仏壇でなく祖霊舎ということを今回初めて知ったくらい宗教的なものには無縁です…」とおっしゃるOさんでしたが、いろいろ考えてくださり、御希望をメールにまとめて送ってくださいました。その中で特に印象に残ったのは、いかにも祖霊舎という風情ではなく、故人のメモリアルコーナー的な場所にしたいという点でした。

また、ご高齢の叔父さん叔母さんがお参りしやすいように、イスに腰掛けて拝む着座拝を選びたいとも書かれていましたので、これらを踏まえた原案をお作りし、幾度かの変更を経て上図のような祖霊舎をお作りすることになりました。

こちらが完成した祖霊舎です。ご覧のように扉はありません。扉を閉じる場面が考えられないので不要なのでは・・・というOさんのご意見を尊重しました。（大きさの目安に身長160cmの人物のイラストを添えてあります）

Oさんの御希望どおり一見したところでは祖霊舎に見えないようにしたかったので「キャビネットのような祖霊舎」を意識してデザインしています。
祖霊舎の下部には、着座拝の際に使用する小椅子を格納できるようになっています。（この小椅子も一緒にお作りしましたが、スペック表に記載されている金額には含まれておりません）

祖霊舎なので、霊璽（れいじ）を納める場所が必要です。一番上の扉を左右に開くと、霊璽を安置するためのスペースが現れます。

霊璽（れいじ）は外から見えないところに安置するものなので、扉は常に閉じた状態を保ちます。

これは「三方」の代替品です。この上に米、水、酒などを供えます。市販の三方を置くと一気に祭具っぽくなってしまうので、雰囲気を損なわない物を別途お作りした次第です。

「三方」置き場のすぐ下にはスライド式の棚板が格納されています。（手前に写っている小椅子はクラポの定番スツール5337Sです）

「故人のメモリアルコーナー的な場所にしたい」という御希望にお応えすべく、思い出の品々をしまっておくための引き出しも設けました。
最後にOさんが送ってくださったメールをご紹介します。

祖霊舎、スツールとも、さすがプロのお仕事、仕上げも素晴らしいですし、つなぎ目もピッタリ、木目も合わせていただいて一枚板に見えるくらいでありがとうございました。全体の木目も大人し過ぎず派手過ぎず、経年変化が楽しみです。
クラポさんの存在をもっと早く存じ上げていれば、テーブルや椅子などもお願いしたかった気持ちでいっぱいです。また機会がありましたら是非よろしくお願いします。

Oさん、ありがとうございました。